(*^◯^*)「戦争が……終わったんだ」
(●△●)「……そうだね」
(*^◯^*)「長かったんだ……」
(●△●)「……そうだね」
レイェフスキとジガルスキは、フランス降伏の後、イギリスに亡命し、暗号解読に従事していた
しかし、その暗号はエニグマではなく、彼らの能力に見合わない低レベルなものだった
ブレッチリー・パークが彼らを採用しなかった理由は不明である
引用元: ・彡(゚)(゚)「エニグマ解読……?」
(●△●)「……」
(* ◯ *)「ルジェツキ君も……局長も……いないんだ」
(●△●)「……そうだね」
イェジ・ルジェツキは、もうこの世の人ではなかった
1942年1月9日 大型客船ラモリシエール号に乗って、フランスへ戻る途中、船が沈没し水死したのだ
彼は、ポーランドから脱出する際、妻と子を共倒れにさせまいと、4ヶ月の子供を窒息死させるという、余りに辛い決断をした
そこまでして、生きていてほしかった妻に会えぬまま、異国の海に沈んだ無念は察するに余りある
( -`ω-´)
( ・`ω・´)「終わったか……」
戦時中、イギリスに亡命する道中、ドイツ軍に捕縛された
その後、シュロス=アイゼンベルクの捕虜収容所に入れられる
だが彼は、ドイツ軍の執拗な尋問に負けず、一切の秘密を漏らさなかった
( ・`ω・´)「……」
( ・`ω・´)「将校殿がこないな……」
( ・`ω・´)「ここにきて、数カ月は経つのだが」
将校「グヴィド・ランゲル少佐、だな?」
( ・`ω・´)「しょ、将校殿!」
将校「ランゲル少佐、君に聞きたいことがある」
将校「フランス脱出の際、ベルトラン(ドイツの内通者と通じていた人物)に力を借りたようだが……」
将校「そのとき、断固とした態度を取らなかったことは本当か?」
(;・`ω・´)「な……誤解です! それは……」
将校「フランスに媚びへつらいおって……このポーランド軍の面汚しが!」
(;・`ω・´)「違います! 私は……」
――
(;・`ω・´)「聞き入れてもらえない……か」
( ・`ω・´)「こうなれば、この戦争での回想録を残すとするか……」
( ・`ω・´)「この回想録を通して、私の正当性を訴えねばなるまい」
(;・`ω・´)「な……世に出すことはできないだと!?」
当時、エニグマに関する文書を公表することはできなかったのだ
(;・`ω・´)「それなら……私はどうなる?」
(;・`ω・´)「自らの汚名を晴らせぬまま、朽ちていけというのか?」
( ;`ω;´)「私は……私は誰よりもポーランドのために生きていたのに……そのことを伝えられぬまま……」
(;-`ω-´)「ウッ!」
(;-`ω……
(;…………
(……………
1948年 グヴィド・ランゲル 死去
ビュロ・シフルフを指揮した男は、1つの勲章も授かれず、失意のうちにこの世を去った
(* ◯ *)「……」
(●△●)「……」
(*^◯^*)「やっぱ、やめるんだ。別れの時は、締まった顔でいるんだ」
(*^◯^*)「ジガルスキ君……」
(●△●)「レイェフスキ君……」
(*^◯^*)「さよならなんだ! またいつか会おうなんだ!」
(●△●)「さようなら、レイェフスキ君!」
ヘンリク・ジガルスキはイギリスに残り、ロンドンで教職に就く
(*^◯^*)「ただいまなんだ!」
レハ ゚ヮ゚ノ!「あなた……」
レハ ;ヮ;ノ!「ううう……おかえりなさい! おかえりなさい!」
アンジェイ「……お父さん!? お父さんが帰ってきたんだ!」
ヤニナ「んだ! 帰ったんだ!」
(*^◯^*)「アンジェイとヤニナ? しばらく見ないうちにずいぶん大きくなったんだ!」
レイェフスキは、7年ごしに、愛する家族の元へ帰ることができた
だが、現地でレイェフスキを快く思わない者がいた。共産党幹部である
幹部1「レイェフスキというやつ……どうやら、戦中に海外に住んでいたらしい」
幹部2「海外住みだと? まさか、やつは退廃しているのではないか?」
幹部1「そうだな……いずれ、この地区の人々に害をなす日が来るかもしれん」
幹部2「監視しやすいよう、製造業に就業させるか……」
レイェフスキは、こんな馬鹿らしい偏見のせいで、製造業の中間管理職に就くよう要請されてしまった
その類まれなる数学の才能を発揮できる場に立てなくなったのだ
結局、年金を受け取る年齢になるまで、数学に関する職に就くことはなかった
――
彡(^)(^)「とうとう、終戦や! やりたかったことをやりまくるで!」
チューリングは、常人の数倍、数十倍のスピードで戦後を駆け抜けた
『機械は人間のように思考できるのか?』
その答えを求めようとする過程で、数ある功績を残したのだ
ざっと挙げてもこれだけある
1945年(終戦)
世界初、蓄積プログラム方式の電子式デジタルコンピュータ『ACE』の設計図を書く
『電子式計算機の提案』という企画書を提出
1948年
『知能機械装置』という報告書を作成
(後に人工知能の中心となる数々の概念について紹介したもの)
1950年
世界初、楽音を発するプログラムを書く(音楽ソフトの原形)
チューリング・テスト(イミテーション・ゲーム)の提唱
1951年
ロンドンの王立協会特別研究員に就任
1953年
遺伝的アルゴリズムを用いたチェス・プログラミングの論文を提出
だが、時代が彼の先見性に追いつかず、生前に評価されないものも多くあった
彡(゚)(゚)(……ん?)
男「……」
彡(゚)(゚)
彡(^)(^)
彡(^)(^)「こんなところで寒いやろ? よかったら食事せえへんか?」
男「……はい」
その男は、アーノルド・マレーと名乗った
後に、チューリング破滅の引き金となる男である
彡(^)(^)「さ、上がってくれやで」
マレー「……すごく大きな家ですね」
彡(゚)(゚)「大したことあらへんあらへん。それより、散らかっててすまんな」
マレー「いえ……それよりあの部屋は? 薬品らしきものが、たくさん並んでますが」
彡(゚)(゚)「あれは悪夢部屋やな。あそこで、いろんなもんを電気分解して遊んでるんや」
彡(^)(^)「スプーンを金メッキで包んだり、青酸化合物の結晶を作ったりとかやな」
マレー「せ、青酸化合物!? それって危険な薬品では……」
彡(゚)(゚)「へーきへーき、さあ飯食おうや」
マレー「は、はい……」
――
彡(-)(-)「ふう……食ったな。なあ、マレー」
マレー「はい?」
彡(゚)(゚)「ワイの家……大きいと言ってくれたんやが、ベッドの方もそれなりにでかくてな」
彡(゚)(゚)「一人で寝るにはちょっと大きすぎるんや」
マレー「……」
彡(゚)(゚)「……」
その夜、チューリングはマレーと行為を交わす
学生時代、1つ年上の男の子に恋をしたときには、自分が同性愛者であることを自覚していた
彡(゚)(゚)「……荒らされとるな。いろんなもんが盗まれとる」
彡(゚)(゚)「……」
――
彡(゚)(゚)「なあ、マレー。ワイの家のもの盗んだか?」
マレー「ななななななに言ってるんですか、そんなことないですよ」
彡(゚)(゚)「……そか」
その後、チューリングはマレーの所持品を警察に提出
指紋が一致し、マレーは逮捕された
問題はその後である
当時、同性愛は『刑法一八八五年改正法第十一条』に抵触する犯罪行為だったのだ
チューリングは警察に、マレーとの関係を深く考えず話してしまい、起訴された
(;゚∀゚)「な! チューリングが逮捕されただと! 同性愛がバレたのか!?」
(;゚∀゚)「……」
(;゚∀゚)「こんな馬鹿みてえなことを許してたまるか……あの英雄を犯罪者にさせてたまるか……!」
ヒュー・アレグザンザ―は、チューリングの人格を絶賛する陳述書を提出した
だが、それも効果がなく、判決は有罪
チューリングは、入獄を逃れるため、女性ホルモンを身体に投与する化学療法を受けることになる
判決が下される前、チューリングはこのように述べた
『事実について争うつもりはありません。しかしその上でわたしは無罪を主張します。わたしの行いが罪であるべきでないからです』
彡(゚)(゚)「ヒュー、ワイのために陳述書出してくれたんやってな」
彡(^)(^)「ありがとうやで」
(;゚∀゚)「すまねえ……俺は……」
彡(^)(^)「まったく、アホみたいやな。女性ホルモンで生まれついての性質が矯正されるなんてな」
彡(゚)(゚)「化学療法のことは心配いらんわ。どうせ一年だけやしな」
彡(゚)(゚)「そんなことよりもや! ワイな、生物学者になろうと思っとるんや」
(;゚∀゚)「せ、生物学者ぁ?」
彡(^)(^)「せや。戦前は論理学、戦後はコンピュータ科学に打ち込んどったんやがな」
彡(^)(^)「生物を『数学』で捉えようと考えたんや。いやぁ、やること考えただけでわくわくするで!」
( ゚∀゚)「……」
彡(゚)(゚)
彡(。)(。)
彡( )( )
『その時』が来るまで、彼が何を考えて生きていたのかなど、彼自身にしかわからないだろう
死因は、シアン中毒
化学療法が彼の精神に悪影響を及ぼしたことによる自殺説
青酸化合物が手に付着し、その手で何かを食したことによる事故死説
秘密を知るチューリングを、裏の誰かが殺害したという他殺説
様々な憶測が飛び交うも、確たる証拠は見つかっていない
その真相は、未だ謎のままである
彼の死体のそばには、一口かじられたリンゴが残っていた
だが、このリンゴに毒物が塗布されていたという記録は残っていない
リンゴをかじるのは彼の習慣であり、この日だけかじっていたというわけでもない
彼の死とリンゴに関わりがあるのかどうかも現時点では不明だ
もし、グヴィド・ランゲルが、自分の回想録を公にすることができたら?
もし、マリアン・レイェフスキが、共産党幹部に対し、エニグマ解読に従事していたことを言えたら?
もし、アラン・チューリングが、1400万人を救い、戦争終結を2年早めた自分の功績を主張できたら?
だが、政府は徹底してエニグマを秘し、これに関する情報漏洩を許さなかった
政府の身勝手によって、惨めな思いをしたものは彼らだけではない
暗号解読に携わったもの全員、自らの功績を語ることができなかったのだ
「前線に出なかったお前は母国の恥さらしだ」という手紙を送られた解読者もいたという
歴史の闇に埋もれた解読者たち――彼らに、光が指すのは終戦より30年たった後だ
情報管理責任者 F・W・ウィンターボサムが『ウルトラ・シークレット』を出版
1982年
ゴードン・ウェルシュマンが『六号舎の歴史』を発表
エニグマ秘匿の呪縛が解かれ、解読者たちの活躍が、人々の目に触れることとなる
第一回チューリング賞がアラン・パリスに授与される
チューリング賞とは、計算機科学において、優れた活躍をした人に授与される賞である
計算機科学のノーベル賞といえるだろう
1978年
死の二年前、マリアン・レイェフスキが『ポロニア・レスティトゥタ勲章』を受勲する
生前にその功績を評価され、この名誉ある勲を授かれたのは、幸運であるとしか言いようがない
くしくも、ヘンリク・ジガルスキが死去したのは、ちょうどこの年である
レイェフスキ・ジガルスキ・ルジェツキを主人公とした『エニグマの秘密』という映画が上映開始
後に、8回シリーズのテレビドラマにされる
1986年
ロンドンのウェストエンドで、ヒュー・ホワイトモアの戯曲「ブレイキング・ザ・コード」が初演される
これは、チューリングの生涯を描いた作品で、テレビドラマ化もされるほどの人気作となった
サックビル・パークに、ベンチに座るチューリングの銅像が設置される
2006年1月23日
ビドゴシチ・カジミエーシュ大学の講堂に、『マリアン・レイェフスキ講堂』という名がつけられる
講堂内には、彼の像の複製が設置してある
化学的去勢を受け、不遇の死を遂げたチューリングに対して、当時首相であった『ゴードン・ブラウン』が謝罪した
彼は、謝罪の中で、このように述べた
チューリングは当時の法律によって扱われ、時計の針を戻すことはできないが
彼への治療は公正なものではなく、彼に対して起きたことに対して
われわれがいかに深く謝罪しているかを伝える機会ができたことを喜ばしく思う
使うものは、爆薬でも戦車でもない
紙とペンとマシン、そして常人を超えた発想力である
一方が解読されぬよう対策をし、もう一方がそれを打開する策を練る
この暗号攻防史は、表舞台の歴史と同様、後世に受け継がなければならない
その影に、暗号では隠しきれないような、執念と悲劇に満ちた物語があったのだから
【完】
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